COLUMN
医師の雇用契約期間・労働条件の明示
公開日:
2023.12.12
2024年4月より医師の時間外労働の上限規制が適用になります。
これに伴い医療機関側が医師の労働条件を見直す流れが起きています。
また、同じタイミングで労働契約法の改正が施行されるため、雇用契約書や労働条件通知の内容には注意して確認する必要があります。
例年の契約更新と思って承諾してしまうと思わぬ変更点に後から気づくことになるかもしれません。
有期雇用と無期雇用のメリット・デメリット
給与や勤務時間を気にする方は多いですが、雇用契約期間を重視するという方は少ないかもしれません。
雇用契約期間には2種類あります。
有期雇用契約
一定の期間(契約期間)に限定された労働契約で、一般的には雇用する側に有利な契約と言われています。
契約期間が満了すると、雇用関係は自動的に終了し、契約を更新するかしないかを雇用側が選択できるためです。
無期雇用契約
契約期間に定めがなく、雇用側はよほどの理由がない限り、労働者との契約を一方的に終了することができません。
そのため労働者には、安定した雇用と収入の保障があります。
【改正労働契約法のポイント】
労働基準法第14条第1項で、有期雇用契約は期間が定められています。
一般的には最長3年までです。一定の条件に該当する方は最長5年までとなっています。これは医師も同様です。
現行の労働契約法では、有期雇用契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みによって無期雇用契約に転換しなければならないルール (無期転換ルール)が適用されています。「無期転換権」はあくまで労働者側からの申込みによって発生しますが、このことを労働者が知らないケースも多く、2024年4月以降は以下を労働条件に明示することが義務付けられます。
1.更新の上限
契約更新の上限の有無、上限がある場合はその内容
2.無期転換申込機会
3.無期転換後の労働条件
医師の場合は給与が高額なこともあり、医療機関側はリスク軽減のため1年単位での有期雇用契約のケースが多いです。
また医師側も勤務条件を柔軟にしたい方や将来の開業を見据えている方など、辞めやすい有期雇用を希望する方も多いようですので、無期転換を申込ケースは稀と言えますが、無期転換したいとお考えの先生はチェックしてください。
雇用契約の内容、労働条件通知書について
雇用契約は「口約束」でも成立するため、雇用契約書を書面で取り交わす必要はありません。
しかし「労働条件の明示」は労働基準法で義務付けられています。また、明示すべき内容についても労働基準法で定められています。
明示すべき最低限の内容は下記の通りです。
・契約期間
・契約更新の基準、更新の上限
・無期転換に関する事項(上記2〜3)
・就業場所、業務内容
・始業・終業時刻、時間外労働の有無、休憩、休日
・賃金の決定方法、支払方法
・昇給、賞与、退職金に関する事項
・昇給
・退職事由
医師の業務や年俸は包括的な部分も多いため、後々トラブルにならないよう雇用契約書を取り交わすことをおススメします。
医師の働き方改革施行
2024年4月施行はもう目前です。
医療機関側は労働条件の見直しや、宿日直許可申請、副業や兼業のルール設定など急ピッチに準備を進めているはずです。
先生方も働き方改革の内容を理解し、医療機関側から提示される制度やルールが正しいものかどうか判断できるように準備しておきましょう。